PSA値は、前立腺肥大症などによる炎症が起きている場合にも高くなります。PSA値が高かった場合は、直腸診、超音波検査、針生検、MRI検査でがんかどうかを診断します。直腸診では、医師が直腸に指を挿入し、直腸の壁越しに前立腺に触れ、形や大きさ、硬さを調べます。針生検は、超音波画像やMRI画像をもとに直腸内腔または会陰(肛門と陰嚢の間)から前立腺に10カ所ほど細い針を刺し組織を採取し、それを顕微鏡で調べてがんの有無、悪性度を明らかにします。

 なお、PSAに関連する物質「プロステートヘルスインデックス(phi)」の血中濃度を調べる検査が2021年に保険適用されました。PSA値によっては、追加でphiの値を調べ、針生検が必要かどうかを判断することもあります。

手術か放射線治療か。シェアード・ディシジョン・メイキングで選択

 前立腺がんの治療法には選択肢が多く、監視療法、手術、放射線治療、ホルモン療法、化学療法などがあります。監視療法は、悪性度の低いものがわずかにあるなど命に関わらない状態のとき、すぐに治療はおこなわず定期的な検査で状態を見守り、経過観察をします。悪化したら根治のための治療をおこないます。

 手術には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術があり、主流はロボット手術です。

 放射線治療は、放射線を外から当てる外照射と、前立腺の中に放射線を出す物質(線源)を入れる内照射に分かれます。外照射には、IMRT(強度変調放射線治療)、SBRT(体幹部定位放射線治療)、粒子線治療(陽子線・重粒子線)が、内照射には、LDR(永久挿入密封小線源療法)、HDR(高線量率組織内照射)があり、種類が豊富です。

 ホルモン療法は、前立腺がんの増殖を促す男性ホルモンの分泌や働きをさまざまな薬で抑える治療法です。化学療法は抗がん剤を用いた治療で、多くの場合、ホルモン療法の薬と併用します。

 がんの広がりや転移の有無、悪性度などがんの状態に応じて治療の選択肢が複数あります。例えば手術と放射線治療の成績が同等で患者自身がどちらかを選ばなくてはならない、さらに放射線治療にしようと思った場合には複数の選択肢があるなど、治療法選択に迷う人もいます。そのため、木村医師は「選択肢の多い前立腺がんでは、医療者と患者が話し合ってどれを選択するかを決めるシェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)が重要」と言います。

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後悔のない治療のためにもSDMは重要