毎日の洗濯、食事の用意・後片づけ、掃除などの家事が、心地よい空間で手際よくできることも、よい住まいの基本的な条件だ。長く住み続けていると、不便な環境であってもそれに適応し、慣れてしまうことがよくある。ただそれは、ストレスや、効率、安全面の問題など悪影響に気づけなくなってしまっているだけ。自宅に問題点がないかを見直し、便利、快適に暮らせるよう改善すれば、家族みんなに笑顔が増え、毎日の生活、人生が変わることに気づくはずだ。

 住まいの便利さ、快適さの鍵を握るのは、動線。動線とは、住まいの中での人の動きを線で表したもので、朝起きてから夜寝るまでにムダな動きがなく、家族の同時使用でぶつかるといった混乱もないのが望ましい。できるだけシンプルで短い動線を描けるのが理想的だ。

 不便な動線でよく見られるのは、キッチンと、浴室、トイレ、洗面・脱衣・洗濯室が離れている例だ。家事をするときの移動距離が長く、並行して作業を進めにくいため、非効率。2階にベランダ(洗濯物を干す場所)があり、1階の洗濯機から遠いケースも少なくない。たくさんの洗濯物を持って急な階段を上がるとなると、危険もともなう。一日の生活のなかで家族がそれぞれどのような動きをするか丁寧にシミュレーションし、動線、間取りを考えたい。

 家庭や家族によって生活習慣は異なるので、最適とされる動線は、住まいそれぞれに異なる。家族のふれあいをうながす動線は、よい家族関係を育むことにもつながる。例えば、家族の個室が2階にあって、玄関から階段に直行できてしまう場合は、「ただいま」「おかえり」といった声がけが難しくなることがある。玄関からすぐにLDKへとつながり、LDKを経由して階段を上がる動線にしておくと、家族が顔を合わせて声をかけることができ、よい関係が生まれやすくなる。

(構成 生活・文化編集部 端 香里)

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