元朝日新聞記者 稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 50歳で会社を辞めてからおっかなびっくり始めた海外民泊ひとり旅で発見したのは、これまで全く気づかなかった旅で持参すべき「最も重要な必需品」の存在である。

 むろんパスポート、お金(クレジットカード)、スマホは現代の旅においては欠かせぬわけですが、それ以外に充実した旅のために絶対必要なものがあったんですよ!

 それは「芸」である。

 ずっと、海外旅行をうまくやるために必要なのは語学力(英語力)と信じてきた。今だって英語さえできればと思わぬ日はない。でも現実問題、50過ぎて語学をマスターせんとなれば若い頃の何倍も労力も時間も必要なはずで、その「若い頃」にあらゆる言語に挑んで敗退を繰り返した身としては、死ぬまでの間に英語一つ身につけられる気はしなかった。それでも果敢に挑戦して奇跡的に話せるようになったとて、その暁には旅をする体力もなくなっていよう。私に残された時間は永遠ではないのである。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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