メキシコではありとあらゆるサボテンを見た。違う土地の植物を見るのは無条件に楽しい(写真:本人提供)

 ってことで見切り発車でエイヤーと見知らぬ国の見知らぬ街へ出かけていき、人参一本買うのも四苦八苦して「マゴマゴした迷惑なおばさん」として現地の人に何度も眉をひそめられているうちに、私はある重要なことに気づいた。

 言葉がダメなら、言葉以外のコミュニケーション方法を使えば良いではないか。

 指差しや身振りはもちろん、スマイル(最重要)、相手と目を合わせての感じの良い挨拶、きちんと列に並ぶこと、周りを観察して場の和を乱さぬよう行動……そんな行動を一つ一つ積み重ねていくと、次第にここぞというタイミングでニッコリして、相手からニッコリが返ってくる確率が9割を突破し始める。そしてさらにそれを極めんとすると、全ては相手と息を合わせ、気持ちを合わせることが肝要と気づくのである。ここまで来ればもはや「芸」としか言いようのない境地といえよう。

 そしてついには、良きコミュニケーションのためにはむしろ言葉以外の方が重要かもしれぬということに気づくのである。

AERA 2024年4月29日-5月6日合併号

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