1961(昭和36)年、24 歳のころ、自宅近くの茅ケ崎の海岸で撮られた貴重なプライベートの加山さん。(提供/朝日新聞社)

カミさんには感謝してもしきれない

「加山雄三は苦労知らずで、順風満帆の人生だった」って思う人もいるかもしれません。でも実際は、大変なこともたくさんあったんです。

 30代のころ、僕が取締役になっていた茅ケ崎のリゾートホテルが倒産して、23億円もの借金を抱えてしまいました。10年でなんとか借金を返済することができましたが、カミさんと結婚したばかりの時期で、1個の卵を夫婦2人で分けあって、卵かけご飯を食べたこともありました。

 37歳のときは北海道のスキー場で圧雪車のキャタピラに巻き込まれて、あわやという大けが。

 ここ最近も自宅で筋トレ中に腰椎椎体骨折してしまったり、2020年には誤嚥がもとで小脳出血を発症して救急搬送。一命は取り留めたものの、治療に専念するため芸能活動を一時休止しました。しばらくは後遺症が残って、完全に復帰するまではリハビリの毎日。自然に出血が止まったので、手術せずに薬で治療でき、脳への影響も少なかったのは、不幸中の幸いです。

 いずれのときも、懸命に看病して、落ち込む僕を励まし、ときには叱咤激励して尻を叩いてくれたのがカミさん。彼女がいなかったらいまの僕はない。だから彼女には感謝してもしきれない。

 そして、つらい思いをして乗り越えられたからこそ、いまがある。心底そう思っているんです。

 長年モットーとしているのは〝人生の三カン王〟。「関心、感動、感謝」です。つくづく思うのは、幸せを「幸せだ」と感じる心がなければ、幸福にはなれないということ。

 いま、生きていることに感謝し、大勢の人に支えられていることに感謝する気持ちを忘れないこと。そして関心、感動、感謝の気持ちをもって、幸せと感じたことは口に出して「幸せだなぁ」って言うことが大切なんだと思っています。

(構成・文/山下 隆)

かやま・ゆうぞう/1937(昭和12)年、神奈川県生まれ。父は俳優の上原謙、母は女優の小桜葉子と芸能一家に育つ。幼少時代からスキー、ピアノ、作曲と才能を発揮、スキーでは国体にも出場した。慶応義塾大学卒業後、東宝と専属契約を結び、俳優デビュー。「若大将シリーズ」で国民的スターとなる。歌手としても「君といつまでも」をはじめヒット曲多数。得意の料理についてまとめた近著『食べた人が笑顔になるそれが最高の喜び 幸せの料理帖』(KADOKAWA)も話題に。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?