あのときと、今回、「反対の声」をあげている女性たちの顔ぶれは違う。女たちの運動は連続しているようで、いつの時代も断絶され、分断され、強い抵抗のうねりを持つのがなぜか難しい。それでもカノジョたちの切実さはいつの時代も、同じだ。そして声を無視し嘲笑する側の「冷静」も、いつの時代も同じ顔をしている。今回の改正案はDVがあった場合は単独親権が認められるたてつけにはなっているが、「DVがあった」と立証することの難しさは、被害者が一番知るところだろう。DV加害者の顔は見抜けない。「社会的に立派で冷静で信頼のおける男性」であることは決して珍しくない

 2019年4月11日に、私は性犯罪無罪判決に抗議するフラワーデモを友人たちと呼びかけた。「娘をレイプしてきた父親が無罪になるのはおかしい」と声をあげた女性たちに、「感情的になるな」「裁判所が無罪にするには理由があるのだ」となだめる声に怒りを感じたことがフラワーデモのきっかけだった。あれから毎月11日、一度も休むことなくデモを続けてきたが、先日6回目の4月11日を迎えて改めて思うのは、いまだに「被害を受けた声」をなだめようとする社会に私たちが生きているということだ。

 今期の朝ドラは、女に法曹界の道が開かれていなかった時代に学び、日本の女性で初めての弁護士の一人になった三淵嘉子氏がモデルだ。「法律的な正解」が必ずしも人を救うとは限らない。というか、けっこう、間違える。法を定め運用する全ての過程に女がいない世界であれば、その法律は女にとって地獄となる可能性もある。朝ドラ「虎に翼」は、女にとっての「地獄」を女たちの連帯で生き抜く姿を描いている。地獄を地獄と名付けることから女の闘いが始まるのだという、フェミニズムの基本の基の意味を改めて教えてくれる朝ドラに励まされながら、今回の「共同親権」可決で味わった悔しさを私たちは忘れない。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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