水原氏は今何を思うのか(写真:AP/アフロ)

依存症は「自殺率」が高い

 なぜギャンブルのために大切な人を裏切り、犯罪までおかしてしまうのか……。依存症の人の思考を理解するのはなかなか難しい面もあるが、大石院長は、「普通の人も想像はできるはず」と、こんなたとえを示す。

「人間の脳には、生命維持/感情/理性という3つの機能があります。進化の過程になぞらえて、ここではワニの脳/サルの脳/ヒトの脳と呼びましょう。たとえばダイエット中の人の場合、空腹を伝えるワニの脳と、おいしいケーキが食べたいと訴えるサルの脳と、太るから控えようと自制するヒトの脳が共存し、せめぎあっている。ヒトの脳が優位になればケーキは食べませんが、“本能”であるワニやサルの脳が優位になって食べてしまうことはよくありますよね。対象がケーキであればかわいいものですが、どこかで間違ってギャンブルや薬物になった場合、悲惨な結果になるわけです」

 依存症という病によって脳の3つの機能がバランスを崩し、分別も法律も存在しないワニやサルの脳に抗えなくなれば、ヒトの脳は罪悪感にさいなまれる。実は依存症は、うつ病をはじめとする精神疾患の中で最も自殺率が高いという。

「水原さんも、今は死んでしまいたいくらいの気持ちではないかと思います」(大石院長)

 日本時間の13日朝、法廷に出廷した水原氏。裁判所では保釈の手続きが行われ、保釈金は2万5000ドル(約380万円)だったという。保釈に際しては、パスポートを返上し、いかなる賭博も行わないという条件がつけられたというが、今後、水原氏の口から胸中が明かされることはあるのだろうか。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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