驚愕の手口が明らかになった水原一平氏(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 ドジャース大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏の違法賭博問題に、急展開があった。米連邦検察は日本時間の12日に会見を開き、捜査の結果、水原氏が大谷選手の口座から1600万ドル(約24億5千万円)以上を不正送金したことや、大谷選手になりすまして銀行に送金を指示したことなどが明らかになったと発表した。大谷選手の無二のパートナーとして認識されていた水原氏の思いもよらぬ姿に、ネット上では「二重人格では?」との声まで上がる。水原氏自身が告白するギャンブル依存症とは、ここまで人を変えてしまうものなのか。約40年にわたり依存症治療に携わる精神科医に話を聞いた。

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 報道によると、水原氏が賭博で負けた総額は日本円で279億8900万円あまり。勝った金額との差し引きの純損失は約62億2300万円という巨額なものだったことが明らかになった。

 そして、今回判明した24億5千万円超の不正送金というケタ外れの金額もさることながら、その巧妙な手口も世の中に衝撃を与えた。米連邦検察の会見により、「大谷選手を装って複数回にわたり銀行に電話し、送金を指示した」「取引確認など銀行からの通知先を水原氏の電話番号に変更していた」「『大谷選手の意向』として、口座情報を代理人や会計士に共有していなかった」といった実態が発覚したのだ。

 通訳だけでなく運転手やキャッチボール相手まで務めていた水原氏は、大谷選手から絶対的な信頼を置かれ、その温厚で実直な人柄は世間からも好印象を抱かれていた。そんな水原氏が、大谷選手に見せる顔からは想像できないほど悪質な犯罪に手を染めていたことに、「二重人格」という印象を受ける人がいるのも無理はない。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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「依存症患者にはよくあること」