大谷選手の前で見せていた顔とはあまりに違いすぎた(写真:AP/アフロ)

依存症患者は「二重人格」ではない

 だが、依存症を専門に診察する大石クリニック(横浜市)の大石雅之院長(70)によると、水原氏の二面性は、一般に二重人格や多重人格と呼ばれる「解離性障害」などではなく、「依存症患者にはよくあること」だという。

「禁煙を主導する厚生労働省の官僚が実はニコチン依存症で、国会審議を抜け出してタバコを吸いに走るケースもあるし、一見普通の会社員がギャンブル依存症で、多額の横領をするケースもザラにあります。過去には、大王製紙の会長が賭博目的で会社のお金を100億円以上使い込んだ事件があったし、私のクリニックのスタッフにも、ギャンブル依存症の末に横領で捕まって刑務所に入っていた人がいます」

 依存症で厄介なのは、依存状態にあることが周囲から見えづらいことだ。大石クリニックの公式サイトでは、ギャンブル依存症だった60代男性の妻の体験談が紹介されている。

「夫は、いつからまた競馬をしていたのか……。夫から告白されるまで、全く気付きませんでした。夫は40才頃から会社でのストレスが増え、土日は仕事と偽っては毎週競馬に通っていたようです。自費での接待や出張費用など、今思えば怪しい部分も多くありましたが、言われるままに夫にお金を渡していました。60才で定年退職した際に、夫からギャンブルでの借金があると告白を受け、退職金でも足りず貯蓄を崩して返済へとあてました。もう二度と競馬はしないと約束し、本人も懲りていると思っていたのですが、数カ月後にはまた競馬を始めていました」

 大石院長いわく「生活をともにする夫婦でさえ気づけないことは多い」というギャンブル依存症の実態を踏まえると、大谷選手が水原氏にだまされ続けてしまったのも不思議ではないのかもしれない。

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ギャンブル依存症患者特有の思考とは