問題のシーンは、2対1とリードしたロッテの8回の守り。無死一、三塁のピンチで、T‐岡田がショート上空に高々と飛球を打ち上げた。

 7回裏に代走で出場したあと、この回からショートの守備に就いた三木亮が打球を追いかけたが、マリンスタジアム特有の風に煽られ、ボールは二塁方向へと流されていく。ひたすら上空を見上げながら走っていた三木は、捕球態勢に入る直前で、二塁ベースの左足を引っかけてスッテンコロリン!この瞬間、ベンチの伊東勤監督も同点を覚悟したに違いない。

 だが、すでに落下点で待ち構えていたセカンドのクルーズが何事もなかったようにキャッチ。この沈着冷静なプレーが三木のチョンボを救ったばかりでなく、チームの逃げ切り勝利にもつながった。

 リズミカルかつ華麗な守備でファンを魅了した助っ人は、同年はゴールデングラブ賞にも輝いている。(文・久保田龍雄)

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。
 

[AERA最新号はこちら]