優勝を決めて胴上げされる栗山英樹監督
優勝を決めて胴上げされる栗山英樹監督

 サッカーのワールドカップ(W杯)と比較して改善点が多いという指摘も見られる。国際サッカー連盟(FIFA)が取り仕切るW杯は1930年の第1回大会から100年近い歴史があるのに対し、WBCは第1回大会が06年とまだスタートして17年余り。競技国もサッカーに比べて圧倒的に少なく、大リーグの選手が参加しなければ国際大会として成り立たない面もある。米国が主催者のため「アメリカファースト」のシステムを覆せないのが現状だ。

 だが、今大会で米メディア、視聴者の認識は変わりつつある。功労者と言える存在が大谷だ。全7試合にスタメン出場し、投手としては3試合に登板。1次リーグ・中国戦と準々決勝・イタリア戦で先発登板すると、指名打者として出場していた決勝・米国戦では九回に抑え投手としてマウンドに上がった。大リーグのスーパースターが感情をあらわにして投打で活躍する。その姿に日本のみならず、世界のファンが熱狂した。

 米スポーツニュースメディア「Sports Media Watch」の報道によると、FOXスポーツの放送で448万人、スペイン語放送「Fox Deportes」を含めると497万人が決勝を視聴した。これまでのWBCで最高視聴者数だった17年の決勝・米国−プエルトリコ戦の305万人を200万人近く上回った。

「米国はWBCが話題になっていないと言われていますが、そんなことはありません。注目度は間違いなく上がっているし、大谷の獅子奮迅の活躍は大々的に報じられている。米国は大会連覇を飾れず、『エースと呼ばれる投手たちを出さないと勝てない。大谷を見習ったほうがいい』と危機感が強まっている」(前出のスポーツ紙記者)

■大谷は今季約85億円

 大会MVPに輝いた大谷は試合後のインタビューで日本野球の注目度が高まることについて聞かれると、こう答えた。

「日本だけじゃなく韓国も台湾も中国も、またその他の国ももっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことが良かったと思いますし、そうなってくれることを願ってます。最高の形になって良かったと思います」

 また、大会後の27日には米経済誌フォーブスが大リーグ選手の今季総収入ランキングを発表し、大谷は大リーグ史上最高額の6500万ドル(約85億円)で1位になった。

 改善の余地はまだまだ多いが、今大会で野球の魅力を再認識した視聴者は多いだろう。欧州やアジア諸国でも野球が盛んになれば、WBCの価値はさらに高まる。大谷は不可能と言われた「投打の二刀流」を実現した。国の垣根を越えて世界中の子どもたちが「第二の大谷」を目指す。野球人口の拡大へ、大きな一歩を踏み出す大会になった。(ライター・今川秀悟)

AERA 2023年4月10日号

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