4月2日の巨人戦で同点打を放った田中

 落合博満元監督が黄金時代を築いた「守りの野球」の象徴が、荒木雅博と井端弘和の「アライバコンビ」だった。鉄壁の守備で幾度もピンチを救い、攻撃も1、2番でチャンスメーク。機動力や小技を絡めて、2ストライクに追い込まれてもファールで粘り球数を費やさせるなど、相手バッテリーの神経をすり減らした。中日の低迷期は「アライバ解体」の時期と重なっている。

 立浪監督も二遊間の重要性を痛感している。22年から監督に就任すると京田陽太(現DeNA)、阿部寿樹(現楽天)をトレードで放出。主力選手の退団は大きな波紋を呼んだが、チームを生まれ変わらせるために断行した。ただ、若返りがスムーズに進んだとは言えない。昨季、新人でチャンスを与えられた村松開人は98試合出場で打率.207、1本塁打、20打点、1盗塁。田中はオープン戦で打撃好調だったが開幕目前に右肩を脱臼して長期離脱。1軍デビューは叶わなかった。

 昨秋のドラフトでは2位で津田啓史、3位で辻本倫太郎と即戦力の遊撃を獲得。アマチュア担当の記者は、

「村松と田中は危機感を抱いたと思います。ドラフトで大学、社会人の二遊間を獲得したということは、現有戦力が物足りないということを意味していますから」

 と話す。その刺激が効いたか、村松も田中も今年は1軍に定着した。

「2人とも学生時代から真面目で後輩のお手本になる選手でした。反省を生かし、ステップアップするための努力を惜しまない。村松は高橋由伸にそっくりな打撃フォームになり、バットがスムーズに出るようになった。田中も故障がなければ1軍で十分に通用する。今年はやってくれるでしょう」(先のアマチュア担当記者)

中田の加入で打線に重みが増した

 身体能力の高さに定評がある三好大倫も、故障で離脱した岡林勇希の穴を埋める活躍を見せている。4番に巨人から加入した中田翔が座って打線に大きな柱が入り、ベテランの大島洋平、中島宏之が代打で控えることで対戦チームに重圧をかけられる。そこに田中、村松の二遊間が「アライバ」のように成長すれば、下馬評を覆す可能性は高まるだろう。

 中日を取材する記者はそれに加えて、「このチームの命運を握っているのは高橋周平だと思います」と強調する。

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