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本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 うさみみさん。「このようなことを記載する場でないことは承知しております」と書かれていますが、そんなことはないですよ。

 うさみみさんが、政治上の立場から「共同親権」の法制化に反対している人なら、僕は取り上げません。うさみみさんが離婚して子供の二人の親権を持つ、まさに当事者であり、「共同親権」の法制化に悩んでいるから、「ほがらか人生相談」で取り上げるのです。

 先に言っておけば、僕は「共同親権」の法制化に関しては、門外漢です。まだまだ勉強の途中です。ですから、今、思っていることしか言えません。

 僕がうさみみさんの相談を取り上げようと思ったのは、うさみみさんが当事者ということと同時に、「共同親権」の法制化が、想像を超えた速度で行われようとしていることです。

「選択的夫婦別姓」は25年以上議論しているのに、なかなか進みません。けれど、「共同親権」は、2024年中の成立を予定しているという爆速です。議論され始めて数年ですよね。

 バイアグラは認可まで6カ月だけど、経口中絶薬は認可まで37年かかった、なんてことを思い出しました。

「共同親権」の速さはなんだろうと思います。

 さて、「共同親権」を勧める典型的な理由としては、「諸外国は離婚後も共同親権だから、日本もそうすべきだ」というのがまずあります。

 でも、「選択的夫婦別姓」を世界で選んでないのは、日本だけです。「諸外国がそうだから、変えよう」と「共同親権」を語る政治家さんは、みんな、「選択的夫婦別姓」にも賛成なんでしょうか。25年以上かかって進まないということは、どうもそうではないと思ってしまいます。(ただし、海外も「共同親権」と言っても、さまざまな形があるようです。イギリスは共同親権と単独親権を選べるとか、アメリカのニューヨーク州は、監護という概念で、身上監護と法的監護に分かれているとか、まだまだ理解の途中です)

 また、「単独親権制によって離婚後に親子が断絶され、離れて住む親と会えなくなっている。子どもの利益のために共同親権を導入すべきだ」というのもあります。が、これは単独親権に対するよくある誤解でしょう。

 単独親権でも、非親権者が子供に会うことは可能だし、特別な場合以外、禁止されていません。僕は離婚して、子供達の親権は母親(元妻)ですが、子供とは普通に会っています。

「単独親権」だから会えない、「共同親権」なら無条件で会えるようになるというのは、特別な関係を無視した合意のない強制的な共同親権までを含めたケースだと思います。

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