権「うるさい! で、部屋に入ってビクビクしながら話聞いてるうちにな……『栴檀と南縁草』の説教をされてだな」
私「……もうすぐ終わりますよ」
権「おしまいに旦那が『もうひとつだけ聞きたいんだけどね、なんで昨日向島で、お久しぶりでございます、なんて言ったんだい?』と聞くわなぁ。そしたら番頭が『はい、堅いと思われていた私があんなところで旦那様にお会いして……もうこれが……』って言うだろ?」
私「………はい」
権「そこまでやったらあんちゃんは高座を何食わぬ顔で降りてこい。オレ入れ替わって『百年目かと思いました』だけ言って、おしまい!……でいーんじゃない? ダメ?」
ダメですよ。どこまでラクしようとお思いか!! ホントにそこまでやったら怒るくせに!!
結局番頭が浮かれている最中、旦那に遭遇する……という、まさに「崖から突き落とされる」シーンで交代することになった。まあまあ妥当なところだろう。前半しかやらないとフラストレーションが溜まるかと思ったがそんなこともなく、終わったらすぐに高座袖から先輩の芸を勉強出来るのがありがたい。
よく聴いてると、後半だけやるほうがはるかに難しい。急にスイッチ入れるのは大変だ。私が前半をやってる時から師匠方は気持ちを作っていかねばならないのだから。
お客様も大勢おいで頂き、勉強にもなり、とてもいい興行でした。百年興行は趣向を凝らして来年2月まで続きますのでよろしくお願い致します。
でもなんだな……お互い一切打ち合わせをせずに、好きなところで降りてきて、次に上がった人も勝手に降りてきて、またさっきの人が上がってまた降りて……とオチを目指してラリーを続ける「好き勝手リレー落語」みたいなのも面白いかもしれんね。「さっきのお前のやり方は気に入らないから、やっぱりオレはここからやり直す!」と勝手に戻ったりしてね。一回やってみようかな。