バナナペーパーの活動で集めた資料はファイル6冊分に(撮影/宮本さおり)

 晃華学園では中3から大学訪問や学問調べを始める。その後、志望校を決め、決意表明書を作成、大学で何をしたいのかを考えさせている。この女子生徒の場合はすでに決意表明の段階で「持続可能な書道についての研究がしたい」という意思が固まっていた。

 理想の社会の実現には文系理系どちらの知識も必要だという考えに至り、文理の垣根なく学ぶリベラルアーツ教育を行う東京大学に憧れた。だが、高2に上がる時、東大という大きな山に気持ちがひるんだ。志望校を私立文系に変更、難関私立の経済学部を第1志望に据えた。

 もう一度、東大を目指すと決めたのは高3の6月、担任との面談がきっかけだった。担任を務めた松元賢次郎教諭はいう。

「学力を見ても活動のまとめを見ても十分に東大を目指せる実力がありました」

 松元教諭は書類の作成にあたり、中学時代の担任らにも話を聞いてまわったが、どの教員からも「授業に対する集中力がずば抜けている」「努力家」という声が上がった。

出願時の書類は膨大

 本人に話を聞くと、「授業に集中することで教科の学びを積み上げ、課外活動の時間を捻出していました」と話す。

 国公立大学の推薦入試は、学業以外の取り組みが評価に入るものの、基礎学力も問う大学がほとんど。東大の場合は入学後の学修を円滑に進めるためとして、共通テストの成績の提出が必須で、「概ね8割以上の得点」を求めている。教科の学力がなければ話にならない。

 加えて出願時に提出する書類も膨大だ。全国や世界レベルの大会での入賞記録などの客観的評価や、本人が書いた論文などが必要となる。おまけにファイルの大きさにしばりがないため、いくらでも資料が付けられる。

「学部により求める人物像は違いますが、東大の場合はいずれの学部も志望理由書で大学卒業後の将来像まで書く。彼女の場合はソーシャルビジネスを立ち上げるという構想がすでにできていた」(松元教諭)

 これまでの活動で調べた資料はファイル6冊分にも及ぶ。私立文系の学びを進めてきたが、論文を仕上げるために統計学も勉強した。ファイルの一部を見せてもらうと、資料は情報がきれいに整理されていた。こちらが欲しい資料を伝えると、すぐさま該当のものを出してくる。この整理能力の高さも質の高い論文につながったのではと教員たちは口をそろえる。

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