「部活動や課外活動をやっている子であれば高校3年の6、7月でもいいです。高3までの部活にひもづけて志望理由書や活動報告を書くこともできると思います。そうした活動をしていない子の場合は高2の3月中には決めた方がいいかなと。出願は8月ですが、高3の4月から7月の4カ月間は提出書類の準備にかかると思います」(中川さん)

 国公立大学の推薦入試導入が広がる一方で、高校によっては推薦入試への出願に否定的な学校もある。地方の公立の進学校に通う保護者からは「学校は推薦入試の話などまったくしてこない」「『推薦は逃げ』という指導を受けている」という声も聞かれ、推薦入試に対する学校の温度差も感じる。

生徒の伸びしろ信じて

 なぜ、公立の進学上位校は推薦入試を勧めないのか。東大の一般入試、推薦入試のいずれでも合格者を出している茨城県立並木中等教育学校の石本由布子教諭はこう話す。

「現役生は一般入試直前まで学力の伸びがすごいです。私立大学の推薦の場合はこの最後の伸びがくる前に入試があるため、もったいないことがあります。学校推薦型や総合型選抜の入試は、落ちた時のことを考えて、一般入試の準備も必要。東大の場合は共通テストでも高得点を取らないと受からないので、東大に行ける実力があり、なおかつやりたいことが決まっている子でないと向かない」

 生徒の伸びしろを信じているがゆえに、上位校では推薦をあまり勧めないということだ。

「学校の責務は、生徒の伸びが最大限となるように支援することだと思います。そのため、これから大きく伸びるであろう生徒が、その成長を犠牲にしてまで、第1志望ではない大学に安易に決めることは勧めたくないですね」

 しかし、その大学が第1志望校で本人に推薦に足る強みがあれば推薦入試を応援するという。

「自分でやるべきことが分かっていて、自ら進めていける子というのが前提です。本人のやりたいことをサポートするのが教師の役割ですから、手取り足取りでないと進めない子では難しい」

(フリーランス記者・宮本さおり、ライター・大楽眞衣子)

AERA 2024年4月1日号より抜粋