小学校の卒業式の時のようす
小学校の卒業式の時のようす

 新学期を前に、昨年話題になった「ギフテッド」の記事を再配信する。さまざまな領域で特別な才能を持つ「ギフテッド」の人たち。西日本に住む40代女性は、IQ130を超える知能を有し、耳が聞こえない「ろう者」でもある。持ち前の能力で勉強も日常生活も聴者と変わらないようにこなしてきた。それなのに、小学生時代にいじめの対象になった理由は、「聞こえないから」ではなく「聞こえないのにできるから」だった。<阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)より一部抜粋・再編集>(この記事は「AERA dot.」2023年5月26日に配信したものの再配信です。年齢は2023年3月時点、その他肩書などは配信時のまま)

【40代になった現在の女性の様子】

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本当はわかる答え、書かずに出した

 2022年8月、一通のメールが取材班に届いた。朝日新聞デジタルの連載「ギフテッド 才能の光と影」を読んだ読者からだった。フォトグラファーの立花奈央子さんの記事に共感したと感想を述べ、自身の経験をつづってくれていた。以下がその文面の一部だ。

「なかなか他の人に話せないことですが、私自身、ろう者で、後にIQ130台だとわかった者です。小2から一般の学校に通いました。先生や周囲の話していることが聞き取れない自分はわかって、聞き取れるはずの同級生はわからないことがとても不思議でした。テストで、本当はわかる答えを書かずに出したこともあります。

『聞こえない人が聞こえる人に認められるためには、勉強ができていないといけない』と信じている親と、『できることでいいことがあったためしがないから、できない自分でいたい』と思う自分との間でとても苦しかったです。(中略) 障害と、学識における「才能」の組み合わせは、とても生きづらいと思います。こういう人たちの存在はどれほど認識されているのでしょうか」

 才能と、身体障害と、生きづらさ。「できない自分でいたい」と思わせたものとは何だったのか。聴者の私にはおよそ考えつかない視点だった。

 メールをくれたのは、西日本に住む40代の女性。教員をしているという。すぐに、詳しくお話を伺いたいと返信すると、「才能のある身体障害児者に関心をもっていただいたこと、本当に嬉しく思います。微力ながらお手伝いさせていただきたい」と返信があった。

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教科書を読めばすぐ理解できた