代替サービスが存在しないDAZNにおいては、スイッチングコストはさほど重視する必要はない。一方のチャーンレートに関しては、スポーツファンのロイヤルティーの高さ、特にJリーグをはじめとする契約者の「推し消費」「応援消費」的な消費行動を考えると、他のサブスクリプションサービスと比べても、低く抑えられると想定できる。

 消費者心理の他に、値上げをせざるを得ない企業側の事情もあるだろう。

 DAZNの財務諸表は公開されていない。「大赤字である」とする報道も見られるが、その理由としてJリーグの視聴者数が低迷していることが挙げられている。スポーツコンテンツに特化しているだけに、他の動画配信サービスと比べても、利用者の裾野を広げるのは難しい。短期的には既存ユーザーから先に売り上げを増やしていくことは、合理的な選択といえる。

 すべての商品やサービスで強気の値上げができるわけではないが、多くの企業が値上げをせざるを得ない状況に置かれていることを考えると、DAZNのような大幅な値上げを可能にしている企業を研究する価値はあるだろう。

(西山守:マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授)

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?