DAZNが離脱防止に設定した「受け皿」

 DAZNの周到なところは、値上げをする一方で、お得なプランも設定して、離脱防止の受け皿としている点だ。

 注目したいのは、年間プランである。月額プランは500円と高い値上げ率になっているが、年間プラン(一括払い)では月額で170円弱の値上げに過ぎない。Jリーグを視聴しているようなコアなユーザーは年間プランで契約している可能性が高く、値上げによる離反は限定的であろう。月額プランを契約しているライトユーザーを、年間プランへと移行させて囲い込んでいこうという戦略もうかがえる。

 また、プロ野球専用の「DAZN Baseball」という安価なプランが提供される予定である。

「DAZN Standard」とDMMが提供する「DMMプレミアム」がセットで提供される「DMM×DAZNホーダイ」が、DAZN単体で契約するよりも安いことで注目を集めている。

 多様な料金プランの設定は、値上げをしつつも、顧客の離脱を防止すると同時に、新規顧客も誘引しようという計算された価格体系のように見える。

映像サブスクは適正価格がわかりづらい

 値上げをした企業は、SNSで叩かれがちな傾向がある。批判を避けるために、ステルス値上げをしたところで、消費者はそれを見抜いて余計に叩かれてしまったりする。

 そうした状況下で、DAZNは強気の値上げができる(あるいはしなければならない)のだろうか? DAZNの運営会社のDAZN Japan Investmentも、英国本社のDAZN Groupも非上場企業で、あまり情報開示がなされていないため、企業側の事情は良くわからない。

 外から見る限りでは、これまで述べてきたことと裏表の関係があるように見える。

 そもそも、生活必需品や有形の商品の値上げの方が批判を集めやすい傾向がある。一方、無形のサブスクリプションサービスは適正価格がわかりづらく、投資回収時期に入ったら値上げをすることは一般的に行われている。実際、Netflixの値上げの際にも、「これまでが安すぎた」「サービス内容を考えると、(値上げは)適正」といった声が聞かれた。

スポーツファンはロイヤルティーが高い

 サブスクリプションサービスから離脱する際は、契約者はいずれかの選択を取る。

 ①においてはスイッチングコスト(サービスの乗り換えの際に利用者が負担するコスト)、②においてはチャーンレート(解約率)が重要な指標となる。

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