西の超名門・灘高校(撮影/編集部・福井しほ)

 東京大や京都大、国公立医学部に毎年多くの生徒を送り出している西の超名門・灘高校。今春も94人が東大に、51人が京大に合格。最難関の東大理科三類には12人が合格した。志望校合格の裏側にある、「効率的」な考え方に迫った。

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「進路指導がないというと言い過ぎだけど、生徒に『ここ受けます』と言われたら、『頑張ってね』というだけなんです」

 そう話すのは、校長の海保雅一さんだ。灘は兵庫県にある中高一貫の男子校で、昨年、“史上最年少市長”として話題をさらった高島崚輔・芦屋市長(27)の母校でもある。

 高島市長が東京大を中退後にハーバード大を卒業したように、同校では東大に進む生徒が多い。23年に66人、22年に62人、21年に75人が東大に現役合格。さらに、京都大を見ても23年に32人、22年に36人、21年に21人が現役で進学している。

 23年の卒業生は220人なので、現役進学率は東大30%、京大14・5%。さらに、保護者の4分の1以上が医療関係者だという同校では、難易度が高い医学部志望の生徒も目立つ。23年に42人、22年に40人、21年に28人が国公立大医学部に現役合格……と、国内屈指の進学校といっても過言ではない。

灘中学校・高等学校の図書館には合格祈願の高崎だるまが並ぶ。図書館司書の生徒への思いが垣間見える(撮影/編集部・福井しほ)

 そのゆえんを尋ねに灘を訪れたが、

「具体的に話せるようなことはないんです」

 と控えめな答え。だが、1928年に開校した当初から「日本一」を意識してきたという。

「進学率とかではなく、社会の各領域で活躍する人物を生み出したいという思いからです。それが結果的に数字で表れただけで、目的ではないんです」

 灘に入ってくる生徒は、第1志望合格を掴み取った子どもがほとんど。中学受験という目標をクリアした直後は、「いったんモチベーションがリセットされる」という。

「そこから、6年間の長いリズムでゆったりと、入試のためじゃない勉強をします」

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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「相手の力を利用して投げる」考え方