広い視点を持つために、「子どもが知らない世界を意図的に見せる努力をするのが大切」と話すのは、『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』などの著書で知られる、進学塾VAMOS代表の富永雄輔さん。スマホを持つ子どもが増える現在、知らないことも“知ったつもり”になっている子が増えていると指摘する。
「スマホありきの調べ方は、特定の狭い分野に深くなることはあっても、自分が興味があること以外の領域を知らないままになる。そうならないためにも、親が意識的に広い視点をもたせてあげられると良い」
主体はあくまで子ども
合格をゴールと捉える親は、塾の三者面談などで、子どもに質問しているのに、親が答えるケースも少なくないとか。
「親の存在が子どもの人生に与える影響が大きいと信じ込んでしまっている親ほど、そうなりがち。子どもには子どもの世界があって、親が知ることができない世界もある。特に大学受験ともなると、主体はあくまで子どもです」(富永さん)
共働き世帯が7割を超える現在、働きながら受験生を支える親も多い。「親の受験」とも呼ばれる中学受験と比べれば、大学受験は親の関与度は下がるものの、中には、「こんな大事な時期に仕事をしていて良いのだろうか」という不安の声も聞かれる。最近では、東大生の母親の専業主婦の割合が約30%、管理職の割合が約5%という調査結果から、「受験を乗り越えるには、仕事をセーブすべきなのか」という議論を呼んだこともあった。
だが富永さんは、「共働きで両親が働く姿を見せるのは、これからの時代を生きる子どもにとっても大切なこと」と話す。富永さんの塾に通う子どもの親も、大半が共働き。ひと昔前までは、3食栄養バランスの取れた食事を作り、夜食も用意するのが受験生の母親の役割とされてきたが、「支え方も時代に合わせて変えるべき」とくぎを刺す。
「今はデリバリーサービスも発達しているし、必ずしも親の手作りごはんじゃないといけないわけじゃない。働きながらでも無理なく支えられるやり方で、バランスを取った方が良い」
仕事が生きる場面も
前出の藤田さんは、シングルマザーとして働きながら、息子2人を育て上げた。「あまり小言を言わずにいられたのは、仕事で忙しかったおかげ」とにっこり笑う。marimcreamさんも、会社員として働きながら息子の受験を支えた。「大変な時も、仕事の時間はそれを忘れられた。一点集中しなくて済んだのは、仕事があったから」と話す。