受験生の親は気力、体力を使い、神経をすり減らす。しんどくてもはけ口がなく、ストレスをため込んでしまいがちだ。
「心の中の不安なことや愚痴をこぼす相手がいないのが受験生の親。仲が良いママ友がいても、核心に触れることは話題にしづらかったりして、本音を話せる相手がなかなかいないのです」
こう話すのは、人気の受験ブログ「二浪日記(大学付属中高一貫だったのに二浪した息子の母の愚痴日記)」を運営する、marimcreamさん。息子の受験に対する言葉にならない思いを吐き出す場所として11年前に始めたブログだったが、息子が大学を卒業し、就職した今もなお、受験生の親から数々の相談や悩みが寄せられる。
「○○大学と○○大学、どちらに行ったほうが良いでしょうか」「心の保ち方を教えてください」など、親から寄せられるリアルな悩みに対し、自身や他の読者の体験談をまじえつつ回答。受験というテーマのもと、見ず知らずの親同士が、安心して本音を吐露し、情報交換ができる場として、活況を呈している。
“女優”になりきって
marimcreamさんの息子は、都内の私立中高一貫校に通っていた。付属大学への進学権もある中高一貫校ということで、「大学受験で浪人はまずないだろう」と考えていたが、息子は高3のときに推薦を全て蹴って浪人し、2浪にも突入。当時は、スーパーに買い物に行くと、普通に買い物をしている人が幸せそうに見えて泣けてきて、暮れの街を照らすイルミネーションもまぶしくて見られなかった。そんな中でも、息子の前では、平静を装うと決めていた。
「子どもの前では『何言ってるの、大学受験に落ちたぐらいで人生何も決まらないわよ』と平静を装いました。受験生の親は、子どもの前では“女優”になりきって、不安が伝染しないようにするのが大事だと思います。私自身、息子の2浪で『また落ちたらどうしよう』という大きな不安の中にいた経験があるので、親御さんから寄せられる悩みや愚痴にも共感できるし、追い詰められる親の気持ちが分かる」(marimcreamさん)
この11年間、受験生の親からの差し迫った相談や悩みを聞く中で感じるのが、「子どもの受験を、親が何とかできると思わないほうがいい」ということ。頭では分かっていても、無意識のうちに「何とかしよう」と思って行動している親が思いのほか多いという。
「そういう人ほど、『私がもっと早く塾を探していたら』『私が滑り止めの大学をもっとリサーチしていたら』など、いつの間にか主語が“自分”になっていることが多い。子どもの受験は、親が何とかできるものではないと捉えるのが大前提だと思います」(同)