2005年に初当選したときの稲田氏と安倍元首相

安倍元首相との会話

 この5年間で計算すると、派閥からキックバックがあった82万円と預かり金口座に残っていた114万円を足すと計196万円。これに対し、ノルマに達せず稲田氏が自腹で出した分が235万円。全体の収支では、39万円のマイナスだったという。なお、稲田氏はすでに196万円を派閥に返金している。

「これは5年間だけで、それ以前の年の分もありますからね。過去までさかのぼればもっとマイナスです。だから、私の本心としては、派閥のパーティーは本当はやめてほしかったです」

 安倍晋三元首相は22年4月、政治資金パーティーの現金での還流をやめるよう進言したとされる。稲田氏によれば、それ以前にも、安倍氏はキックバックをやめようとしていたことがあったという。

「05年に共同通信が清和研(当時は森派)の政治資金パーティーで、割り当てを超えるパーティー券を販売した若手議員に資金の一部が還元され、派閥の政治資金収支報告書にも記載がないことから裏金化しているという疑惑を報じたんです。それがいろいろな地方紙にも配信されました。安倍元総理はこの年、幹事長代理として、党本部にコンプライアンス室を設置させています」

 そして安倍氏が亡くなる1カ月ほど前の22年初夏。安倍氏は稲田氏にこう話したという。

「安倍元総理は、『個人のパーティーができなくて、派閥のパーティーを使って政治資金を集めている議員たちがいる。返金を期待している議員たちもいて、それはかわいそうなんだが、もうノルマ超えの返金はやめる』とおっしゃっていました。現金でのキックバックとか、不記載という言葉は出ませんでしたが、安倍元総理は『もうやめる』と断言していました」

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