「ブギウギ」ゆかりの徳島県東かがわ市のイベントで参加者と一緒に踊る翼和希(中央)

業界人からも絶賛

 翼が今回の役に抜擢されるまでには、興味深いエピソードがある。「ブギウギ」のオーディションについて語っていたインタビューによると、劇団の大先輩・笠置シヅ子がモデルということで、翼には強い思いがあったが、劇団側が出した応募書類はヒロインのオーディションだったという。翼本人は、男役の自分がヒロインに受かるとは思えなかったが、爪痕だけは残したいと、バチバチのスーツに風にもなびかないほど固めたリーゼントで挑んだという。

「翼さんは『これは舞台だ』と自分に言い聞かせ、課題曲である笠置さんの『ヘイヘイブギ』を審査員とコール&レスポンスをしながら、思い切り歌い上げ、男役トップスターという役を得ることができたそうです。今回の朝ドラがテレビドラマ初出演ながら、翼さんの演技は業界人からも絶賛されており、人柄も相まって、今後もドラマなどへのオファーが殺到するのではないでしょうか」(民放ドラマ制作スタッフ)

 エンターテイメントジャーナリストの中村裕一氏は、彼女の魅力をこう分析する。

「『ブギウギ』で彼女が登場した時のファーストインパクトはかなりのものでした。スズ子ら新人の教育係として彼女たちを厳しく指導するとともに、蒼井優演じる大和礼子に対して複雑な思いを抱く、微妙な心の揺れも見事に表現していました。ドラマ初出演とは思えないほど堂々とした、かつ丁寧な演技に引き込まれた人も多かったと思います。歌劇団出身で現在活躍中の俳優といえば、黒木瞳や真矢みき、天海祐希らがいますが、みなさんすでにベテランです。彼女の場合、まだ現役歌劇団員ということもあり、しばらくは舞台での活動がメインになるとは思いますが、先輩たちのようにドラマにも出演することで、新たな風をもたらしてくれそうです。例えば、刑事や警察官などのストイックでタフな役だけでなく、真逆の繊細で傷つきやすい役まで、ステージ同様、多彩な姿と表情を見せてほしいですね」

 一躍その名を知らしめた実力派女優が、これからどこまで飛躍するのか楽しみだ。

(丸山ひろし)

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丸山ひろし

丸山ひろし

埼玉県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集業務に従事。その後ライターに転身し、現在はウェブニュースや、エンタメ関連の記事を中心に執筆している。

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