ファミマが「常識破り」のスウェット販売に乗り出した狙い

 ファミマのスウェット販売には、「非食品売り場」を活性化する狙いがあるといえる。

 というのも、弁当・おにぎり・飲料などの食品がメイン商材であるコンビニでは、かねて「非食品」の底上げが悩みのタネとなってきた。

 ローソン元社長の新浪剛史氏(現サントリーホールディングス社長)は、ローソン社長在任時に「もう1品何かを買ってもらう努力をしたい」と語っていたことがある。顧客の買い上げ点数を増やすに当たって、食品だけでは限界があるということだ。

 だからこそコンビニ各社は、非食品の品ぞろえについて試行錯誤を繰り返してきた。一時は漫画本がコンビニの一角を占拠したのはそのためだ。だが立ち読みが増え、回転率が下がる結果を招いた。今では立ち読み防止のテープなどを施した漫画本が、雑誌コーナーにひっそりと置かれている。

 そうした試行錯誤の中で、いつしか「(衣料品のような)高額の、好みが分かれるものはコンビニでは売れない」(コンビニ幹部)というジンクスが生まれた。

 だが歴史をひもとくと、1974年に東京・江東区にセブン-イレブンの1号店がオープンした際、最初の客が買ったのはサングラスだったというのは有名な話だ。黎明(れいめい)期から、ファッション用品は買い上げ点数を増やす可能性を秘めていたといえる。さらに、衣料品は値入率(売価に対する値入高の比率)も高い。腐る商品でもないし、廃棄ロスも発生しづらい。

 仮に単価が4000円程度の商品が売れれば、おにぎりと飲料のセット買いの10回分以上に相当する。一気に非食品売り場を活性化できるほか、買い上げ単価の上昇にもなるなど、いいことづくめだ。

 上記のジンクスは、工夫次第で覆す余地があったのだ。

 ファミマはここに着目し、売り方や仕様を研究したのだろう。筆者も実際にファミマでスウェットを買ってみたが、コンビニの商品だとは思えない出来だった。部屋着として使えるだけでなく、買い物などの「ちょっとした外出」にも着ていける仕様になっている。

 そもそも家から少し歩くだけで、コンビニで衣料が買えること自体がうれしい。ユニクロの実店舗よりも近く、インターネット通販に頼るまでもなく商品を入手できる。先述の通り単価は少々高いが、品質・利便性・店の近さなどを総合的に考えれば「安い」と筆者は考える。

 一般消費者に取材したところ、「普段着、部屋着なら近くのコンビニ(ファミマ)でいい」(50代主婦)という声も聞かれた。

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