ファミマのスウェットがユニクロの顧客を奪う時代に!?

 ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は、かつて「服は部品に過ぎない」「コンビニ弁当と同じ」と語っていたことがある。皮肉にも、今はその言葉通りコンビニで衣料品が買える時代になった。服が古くなったら、部品を取り換えるようにコンビニで買い替える。そんな購買スタイルも定着してきた。

 まさかファミマの衣料品が売れているからではないだろうが、ファミマでスウェットが発売された2023年12月、ユニクロの既存店売上高(国内)は前年同月比84.6%と振るわなかった。もちろん暖冬で冬物衣料がさえなかったことが実際の理由なのだが、そう勘繰りたくなるほど、ファミマのスウェットは競争力が高い商品だといえる。

 ファミマのアパレルは、商品の回転率や販売効率が悪く、単なる“日用品の置き場”だった非食品売り場を変えようとしている。狭いスペースの売り場で、最大限のパフォーマンスを出すにはどうすればいいのか。その1つの答えを、スウェットが体現しつつある。

 ファミマがそうした境地にたどり着けた背景には、親会社のDNAがあるのではないか。

 20年にファミマを完全子会社化した伊藤忠商事は「繊維」を祖業とする総合商社である。もしかすると買収後のファミマには、親会社の祖業を現在のビジネスに生かそうとする風土があるのかもしれない。質の高い繊維を仕入れるルートも持っているとみられる。

 実際、ファミマのアパレルがヒットするのはこれが初めてではない。20年に日用品ブランド「コンビニエンスウェア」を立ち上げると、同ブランドに含まれる靴下の累計販売数が1500万足を突破するなど好調を維持してきた。

 その実績に基づくブランディングも、スウェットが売れる布石になっていたのだろう。コンビニでは、単に良いものを作れば売れるというわけではない。顧客心理や時代の変化を考慮したものでなければヒットしない。

 ここでもう1つ鍵となるのが、「ドカンと仕入れてドカンと売る」「大量に安く買い付けてから売り先を探す」という「総合商社の稼ぎ方」が、ファミマのアパレルには適用されなかったことだ。

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ
次のページ