後宮は、天皇の寵愛(ちょうあい)を受けようとする女性たちの嫉妬が渦巻いていた。紫式部は皮肉に気づかないふりをしてイジメを回避したという(イラスト 夏江まみ)

 結婚後は夫の着物を選ぶのも、相談に乗るのも妻の大事な仕事だったため、ファッションセンスの有無や言葉遣い、トークのセンスも求められた。

 結婚できても安心はできない。違う女性のもとに通われ、捨てられるというのもよくある話だった。なかでも、夫の秘密をいいふらす妻は、出世の足手まといになるため離婚が許された。父や夫の都合で、強制的に引っ越しをさせられることもあったし、後ろ盾である父を亡くすと、日々の食事に困るほど落ちぶれてしまうことも多かった。

 平安貴族の女性は、男性の都合で人生が決まるといっても過言ではなく、入内(後宮入り)がかなったとしても、それはそれで苦しむことが多かった。下級貴族の娘が天皇に目をかけられでもすると、他の后たちから陰湿なイジメを受ける可能性があったからだ。『源氏物語』にも、天皇のもとへ向かおうとする女性を通せんぼするというイジメの場面が描かれている。

 そして、お姫様に仕える女房も苦労が多かった。女房たちは自分の主人がばかにされないよう、センスや知恵を磨いてお姫様の顔をたてる必要があった。そんな女房から紫式部、清少納言といった英才女子が誕生したのだ。

(構成 生活・文化編集部 上原千穂 永井優希)

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