もちろん、私は歴史を研究しているので、多少は歴史の知識があります。古代史の知識はあまりありませんが、借金に走ることは――とくに大規模な個人的借金は――借金の奴隷のようなものへと、人々を導く最初の一手であることを知っています。

 就職して働き始める前に、個人的な借金を背負ったアメリカの現在の学生は、19世紀の政治思想家たちが、「市民の自由」などと言っていたような状態とは程遠いのです。

 これが、私が恐れている、暗い未来の一部です。

 私たちの世代にとってはとくにですが、これ以上悪いことが起きると想像するのは難しいことです。

 1951年生まれの私は、人生の大半で、生活水準の驚異的な向上を経験してきました。かつては南仏にある私の村から電話をかけるのさえ難しかったころもありましたが、今は携帯電話を持っていて、どこでも誰にでも電話をかけることができます。

 市民の積極的な政治参加があったころはまだ、民主主義の時代でした。これはフランスにもイギリスにもアメリカにも当てはまりますが、当時の歴史は同じような傾向がありました。

 しかし、グローバル化などによって、産業システムが崩壊していくのを目の当たりにします。そして、物質的な困難を抱えるようになります。

 コロナ禍の時期、西洋には、必要な医療品や機械、マスクなどを作ることができないことがわかり、私は本当に驚きました。フランスでは、乳幼児の死亡率がわずかに上昇しましたし、大きな政治的な機能不全があり、警察の取り締まり姿勢は強硬になっています。アメリカでは状況がもっと悪く、バイデンが当選した後、銃乱射事件や連邦議会議事堂の襲撃事件が起きました。

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