「『働くママ』は偉いですか? 『ママ礼賛』の微妙な空気」(09年6月1日号)。「子なしハラスメント 『子ども=幸せ』の公式が息苦しい」(15年4月20日号)──。アエラにも新たな課題を浮き彫りにする記事が掲載された。

 子どもがいない人は、時短勤務は使えず、残業拒否なんてできない。一方、子どもがいれば、もっと働きたくてもワンオペ育児で余力ゼロ。マミートラックで二級戦力扱いを受けることもある。産んだ女性も、産んでいない女性も、独身も既婚も、すべての女性たちが苦しんでいた。

 元編集長の浜田さんは言う。

「育休も時短勤務も女性だけの制度ではないのに、企業側はもちろん、当事者も我々メディアも両立支援制度を使うのは女性だという思い込みがあった。結果、性別役割の強化につながり、男性の意識が全く変わらず、多くの女性が幸せではない状態になってしまっていた」

 15年11月には「資生堂ショック」が起きた。その前年、両立支援制度の手厚さで知られた資生堂が、育児中の女性にも夜間や土日の出勤を促すよう方針転換したことをNHKが報じたもので、大きな話題となった。

“自分らしい”選択を

 賛否両論が相次ぐ中、アエラは、資生堂の方針転換に女性たちのキャリア支援の意義があることに着目する。繁忙時間帯である夕方や土日は、美容部員にとってスキルアップにつながる大切な勤務なのだという。

「過剰な配慮より評価を 『資生堂ショック』で変わる女性の働き方」(16年1月25日号)。そう題した記事は、働きながらキャリアを積みたいと考えていた女性たちの支持を得た。何より、家事育児に男性が主体的に参画すれば、女性はもっと自由に働くことも生きることもできるという、当たり前のことに気づく契機となった。

 アエラが女性の生き方を報じ始めてから約30年。働き続けることすら難しかった90年代、両立支援が充実した00年代、女性たちの中に不公平感が漂った10年代を経て、ようやく今、性別役割を超えた誰もが働きやすいインフラの議論が始まっている。木村恵子編集長は言う。

「女性といってもひとくくりではない。子育てする人も、シングルを選ぶ人も、働く人も、いまはプライベートを重視したいという人も、いろいろな“自分らしい”選択が柔軟にできるようになるといい。そしてそれは、男性を含めたすべての人が働きやすく生きやすい社会だと思う。アエラはこれからも、そんな『自由』で『多様』な選択ができる社会になるために報道を続けていきます」

(編集部・古田真梨子)

AERA 2024年3月11日号

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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