課題を可視化する
03年、酒井順子さんの著書『負け犬の遠吠え』がベストセラーになった。「30代以上・未婚・子ナシ」の女性の生き方が肯定的に書かれたものだったが、アエラの見出しは「『負け犬女』はどっちだ」(04年1月19日号)、「負け犬の結婚 勝ち犬の離婚」(05年1月3-10日号)と強気だ。その後も、女性を「管理職vs.ヒラ社員」「東京出身vs.地方出身」「子アリvs.子ナシ」といった具合に対立させる特集が続いた。
後の14~16年にアエラ初の女性編集長となるジャーナリストの浜田敬子さんは、当時ちょうど副編集長になったばかり。振り返って、こう話す。
「女性が直面している課題をとにかく可視化して伝えなければと思っていました。週刊誌的には対立構造にしたほうがインパクトがあって、売れるし、読んでもらえる。でも対立構造にしてしまったことで、問題が矮小化してしまい、本質が何も変わらなかったという反省があります。あの頃、本当に言いたかったのは、女性たちは立場が違うことによって分断されやすく、それぞれが課題を抱えているということでした」
編集部内で「女性」をどう報じるかについて日々、議論が交わされる中、大手企業を中心に少しずつ産休・育休の制度が整い始める。時短勤務の導入も始まった。アエラでは、それら「両立支援制度」が充実している企業を何社も取材。4年間の育休取得制度を採用したと聞けば、「期待が膨らむが、そんなに休んで職場に戻れるのかしら?」と必ず女性たちのリアルな声を織り交ぜながら伝えた。
誰も幸せではない状態
記事のトーンが少し変わり始めたのは、10年前後からだ。
両立支援制度の広がりで、女性が働き続けることのハードルが下がり、ワーママが多数派になった。15年には女性活躍推進法が成立したが、政府もメディアも待機児童問題、ワンオペ育児問題など「子どもを産んだ女性をどう支えるか」ばかり。その結果、独身や子どものいない女性たちが居場所を失い、悲痛な声が漏れるようになったのだ。