大谷翔平のメジャー7年目が始まったが、エンゼルスにいた昨年までとは雰囲気が一味違う。プロスポーツ史上最高となる10年総額7億ドルの超大型契約で、ワールドシリーズ優勝を期待される強豪球団に移籍したからだ。AERA 2024年3月11日号より。
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ロサンゼルス・ドジャースは、実力派選手が揃うメジャーリーグきっての人気球団だが、大谷翔平の加入でキャンプは例年以上の盛り上がりだと、ロサンゼルス・タイムズでスポーツコラムニストを務め、2008年から毎年スプリングトレーニングを取材しているディラン・ヘルナンデスは言う。
MVP受賞経験のあるムーキー・ベッツやフレディー・フリーマンといったスター選手が打撃練習をしていても、大谷が現れるとファンは一斉にそちらに移動する。屋内練習場からフィールドに移動する選手にファンは声援を送るが、大谷が通る時だけは黄色い声が上がる。しかも、日本人だけでなくアメリカ人からもだ。ドジャースは、大谷以外にも山本由伸やタイラー・グラスノーなどの大型補強をしたが、ファンやメディアの間で話題になるのは、ほぼ大谷だけだとヘルナンデスは言う。
「みんなが大谷を追っている」とヘルナンデス。「『頑張れ~』という声援ではなくて、『キャー、大谷がいる~!』とファンが声を上げるような、野球というスポーツの枠を超えた存在になった感じ。もはやアイドルだよ」
野球界唯一のセレブ
アメリカでは、メジャーリーグのスター選手のほとんどは、野球ファン以外には知られていない。日本のように、WBCで活躍した選手などが一般向けの情報番組やバラエティー番組などに出演して全国的な知名度を得るという仕組みはない。普段から野球を見ているファン以外に名を知られるには、誰も成し遂げたことのないパフォーマンスやテイラー・スウィフトのようなセレブと交際しているなどの話題性が必要となる。米球界には、ここ20年ほどそういうスーパースターがいなかった。大谷が現れるまでは。