3月8日の「国際女性デー」にあわせ、Z世代の女性向けエッセイ投稿サイト「かがみよかがみ(https://mirror.asahi.com/)」と「AERA dot.」が、コラボ企画を実施。「ニュースとわたし」をテーマに、女性限定でエッセイを募集しました。多くのエッセイの投稿をいただき、ありがとうございました。
 投稿作品の中から優秀作として5本のエッセイを選抜、「AERA dot.」で順次紹介していきます。記事の最後には、鎌田倫子編集長の講評も掲載しています。
 ぜひご覧ください!

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朝、一人暮らしのアパートで見たテレビニュースには、数々の若者の写真に私の同級生の顔写真が紛れて並んでいた。彼女はひときわ目を引く容姿だったのですぐに分かったが、寝ぼけまなこの私は状況を一瞬に掴むことができなかった。

ベッドを背に、こたつのスイッチをつけてぼんやりとアナウンサーの声を聞いていたら、富山の母から電話がかかった。
「○○ちゃんがニュージーランドの地震に巻き込まれたらしい」

私はようやく理解した。
 

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 みなさんは2011年2月22日に起こったニュージーランド南部地震のことを覚えているだろうか。同じ年に起こった3.11(東日本大震災)のほうが多くの日本人に衝撃を残したから、「そんなこともあったな」と感じる方もいるかもしれない。ただ私にとっては、2.22も3.11と同じぐらい、いや本当のことを言うと、遺族の方々や犠牲者の方々にとっては大変申し訳なく、薄情なことに、自分の中で少しずつ傷が癒え始めていた。

ニュージーランドの地震では、ビルの倒壊によって28人の日本人が犠牲となった。そのうち富山の語学学校の生徒は12人。母の電話を受けて私はすぐ、地震に巻き込まれた彼女の携帯電話に電話をかけた。もちろん、繋がらない。メールも何度も送った。もちろん返事はない。ひしゃげて焦げたビルの中でどうなっているのかやきもきしているうちに、数日後、彼女の死が知らされた。

3月の頭、私は下宿先から富山に戻った。どこから辿ったのか、新聞記者が私の家を訪ねてきた。あまり自己主張をしない彼女のことを家族でもない私が語るのは少しためらったけれど、私が知る彼女の人生の一部を語ることで、地震が奪ったものがどれだけ尊いものだったのかを世の中に伝えることができるかもしれない。そう思い、取材を受けることにした。

同じ吹奏楽部でフルートのソロを吹いた彼女の映像を提供し、彼女がいかに人当たりがよく、気遣いができ、美しい人だったかを語った。後日、地域面に彼女のことが、演奏姿の写真つきで掲載された。
 

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