こうしたことから、売春目的の女性たちは、慣れている人ほど、入国対策としてあらかじめスマホ内のデータを消したり、持ち物を精査するなどの準備をする。だが海外に出稼ぎに行く動きが広がり、出稼ぎ初心者の渡航も増えるなかで、対策がおろそかなまま入国しようとし、ストップをかけられる例が一定数あるようだ。「仕事は?」と聞かれて、正直に「キャバクラ勤務です」と答えたことで、売春を伴う職業とみなされ、入国できなかった例もある。ビザ問題に詳しい弁護士の上野潤さん(イデア・パートナーズ)は言う。
「日本では、水商売と性風俗の仕事とが区別されていますが、アメリカでは“売春か、そうでないか”という見方になります。つまり、“対価を目的に関係を持つかどうか”でしか見ません。どこまで何を疑うかは、入国審査官や移民官、警察官にも、それぞれ個々の基準があり、人によるところも大きい。キャバクラ勤務=売春婦だと思っている審査官も普通にいます。“対価を目的に関係を持つ行為”の解釈が、日本より広い傾向にあるのは間違いないでしょう」
下着やポーチの中まで全て調べ詰問
入国審査官に売春を疑われた場合、空港の別室に連れて行かれ、警察官などから長時間にわたって取り調べを受けることになる。「なぜ一人なのか」「職業は」「宿泊先は」「入国の本当の目的は」「入国後、誰かと仕事の約束をしているのではないか」といった質問に始まり、荷物も下着やポーチの中身に至るまで、全て調べられる。服が多いと「なぜ荷物にこれほど洋服があるのか」、派手な下着が入っていると「なぜ下着が派手なのか。仕事で使うのではないか」という流れになる。