投手にとって最高の名誉と言われる沢村賞。1989年からは両リーグの投手が対象となって選出されるようになり(それ以前はセ・リーグの投手のみが対象)、NPBの先発投手にとって目指すべき賞と言えるだろう。昨年まではオリックスのエースだった山本由伸(今季からドジャース)が史上初となる3年連続で受賞しており、一強状態が続いていたが、その山本がメジャーに移籍したこともあって今年は本命不在という状況だ。果たしてそんな争いを制する投手は誰になるのだろうか。少し気が早いが5人の有力候補をピックアップしてみたいと思う。
本命として推したいのはやはり佐々木朗希(ロッテ)だ。先発投手の場合、1イニングあたりの被安打と与四球で計算するWHIPは1.00未満であれば超一流と言われるが、佐々木の数字を見ると一昨年は0.80、昨年は0.75となっており、山本由伸の0.93(2022年)、0.88(2023年)を上回っている。相手打者を完璧に抑え込めるという意味では既に12球団でもトップの存在と言えるだろう。
唯一の懸念点がコンディション面である。一昨年は20試合、昨年は15試合の先発にとどまっており、これまで規定投球回数に到達したことはない。ただオフにはメジャー移籍の希望を口にするなど、ポスティングシステムの容認のためにも周囲が納得する成績をおさめたいというモチベーションも高いはずだ。シーズンを通して万全の状態で投げることができれば、沢村賞だけでなく山本のように投手タイトルを総なめにする可能性も高いだろう。
続いて対抗として挙げたいのが山下舜平大(オリックス)だ。昨シーズンはプロ初登板で開幕投手という大役を任されると、シーズン序盤から見事なピッチングを披露。8月後半の試合で腰を痛め、その後は登板がなく規定投球回数には届かなかったものの、16試合に先発して9勝3敗、防御率1.61という見事な成績を残して新人王にも輝いた。