佐々木に比べると被安打、与四球は数字的に少し劣るがそれでもWHIPは1.06と安定しており、イニング数を上回る奪三振を記録しているのも好材料だ。このキャンプでも痛めた腰の影響を感じさせない調整を続けており、さらにスケールアップした印象を受ける。山本なき後のチームのエースとして期待も大きく、タイトル争いに絡んでくることは十分に期待できそうだ。
この2人に次ぐ存在としては村上頌樹(阪神)の名前が挙がる。山下と同様に一軍に定着したのは昨シーズンからだが、開幕からセ・リーグ最多タイ記録となる31イニング連続無失点を達成するなど10勝6敗、防御率1.75で最優秀防御率のタイトルを獲得し、セ・リーグの新人王とMVPにも輝いた。ストレートの平均球速は140キロ台中盤と佐々木や山下のようなスピードがあるわけではないが、回転数、回転効率などの数値が非常に高く、被打率でも2人を大きく上回っている。また制球力の高さも見事で、昨シーズンのWHIPは0.74と佐々木をも上回っている。山下と同様に“(実質)2年目のジンクス”は不安要素だが、昨年と変わらない投球ができれば、十分タイトル争いに加わってくるだけの力はあるだろう。
沢村賞には登板試合数(25試合以上)、完投数(10試合以上)、勝利数(15勝以上)、勝率(6割以上)、投球回数(200回以上)、奪三振数(150個以上)、防御率(2.50以下)という7個の目安があるが、分業制が進んだことから完投数は年々重要視されなくなってきている。一方で勝利数、勝率、奪三振数、防御率の4項目の重要性は変わっておらず、そういう点から浮上してきそうなのが戸郷翔征(巨人)と平良海馬(西武)の2人だ。
戸郷は昨年まで3年連続で規定投球回をクリアしており、一昨年は154奪三振で最多奪三振のタイトルも獲得している。昨年は奪三振数こそわずかに減らしたものの、防御率2.38、勝率.706とキャリアハイとなる数字をマークした。先発投手としての実績はこれまでに挙げた投手の中でもナンバーワンであり、昨年の安定感を維持したまま15勝に到達すれば沢村賞も見えてくるはずだ。