13年にドラフト3位で巨人入りした左腕・田口は16年に10勝、17年に13勝と2年連続二桁勝利を記録。中継ぎに回った19年も55試合登板の3勝14ホールドとフル回転していた。一方、智弁学園時代に岡本和真の1年後輩だった広岡は、ヤクルト4年目の19年に10本塁打を記録するなど、一発長打が魅力の“未完の大器”だった。
このトレードは、坂本勇人の後継ショートを探していた巨人が、広岡の潜在能力を評価し、獲得に動いたといわれる。これに対し、2年連続最下位からの脱却を目指すヤクルトも、先発投手不足を補うべく、故障の影響で2軍落ちしていた田口を指名。双方ともに補強ポイントを埋める実のあるトレードになった。
結果的に得をしたのは、ヤクルトだった。入団会見で「転校生の気分でいます。今年は最後までローテーションに入って、ジャイアンツの連覇を阻止して、優勝したいなと思います」と語った田口は先発、リリーフの両方で最下位から優勝という“下剋上V”に貢献。昨季は“守護神”として3勝33セーブを記録するなど、トレードがきっかけで野球人生が大きく開けた。
巨人時代に殻を打ち破れなかった広岡も、昨季途中に移籍したオリックスで9年目の飛躍を期している。(文・久保田龍雄)
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。