エマニュエル・トッド氏

 トルコや他の国も同じかもしれません。しかし、これらの国々では民主主義が台頭しつつあると言えます。民主主義に向けた前向きな動きがあるからです。これは欧米には当てはまりません。

 西側諸国の民主主義は、機能不全どころか、消滅しつつあります。ヨーロッパの共同体(EU)に関しては、もはや完全に寡頭制です。一部の国が他国より強く、一部の国には力がない。ドイツがトップにいて、フランスが下士官、その一方でギリシャは存在感がないといった具合のグローバルシステムです。

 ウクライナ戦争も同様です。ヨーロッパは民主主義の価値のために戦っているふりをしているだけで、これは完全な妄想です。そして驚くべきことに、私たちはそれに気づいていません。自分たちの国について話すときには、「民主主義の危機を抱えている」と言っているにもかかわらず。

 しかし、西洋以外の人々はそれを見抜いています。彼らは、私たちをありのままを見ているのです。西洋は、何か違うものに変わりつつあり、もはや十分な生産ができなくなっています。また先ほど言ったように、グローバル化とは、第二の植民地時代、つまり「グローバルな植民地時代」であることが判明したのです。

 私たちのシステムは、もはやダイナミックな民主主義ではなく、消えゆく民主主義なのです。そして、戦争によって、この状態に誰もが適応する必要が出てきました。

次のページ
現実を確かめる究極の試金石