
繰り返しますが、ウクライナ人の苦しみや戦争の残酷さを忘れることはできませんが、戦争とは結局のところ、私たちにとって、現実を確かめる究極の試金石なのです。
こういう時こそ、歴史家、経済学者、その他あらゆるタイプの社会科学者が、より現実的で健全な方法で自分たちの仕事をするべきなのです。
――あなたは自由民主主義の価値を支持する知識人の一人です。たとえ自由民主主義が、今現在失われているとしても、失地回復するチャンスはまだあると思いますか。あなたがおっしゃったリベラルな寡頭制からの回帰の面から考えるといかがでしょうか。
トッド:それは私が、20年ほど前から考えてきたことです。まさに私が『帝国以後』を書いたのは、今から20年ほど前でした。この本はアメリカについて書いた本であり、イラク侵攻の少し前に出版されました。そして、この本には、私がここまでに話してきた多くの傾向が書かれています。
寡頭政治への推進、アメリカの「不労所得者国家」状態、貿易赤字……。そして、アメリカという国自体が必要と見せかけて世界に混乱を生み出す傾向などなど。
しかし、この本はある種の希望で終わっています。つまり、アメリカが再び民主的な価値観に戻り、何とか回復してほしいという希望でした。