Sustainable Urban Mobility Plan(持続可能な都市モビリティ計画)の頭文字を取ったもので、13年に欧州委員会で提示され今では欧州発の指針として世界に広がっている。

 SUMPの特徴は、未来を起点にした「バックキャスト」にあると宇都宮教授。

「目指す未来について市民も含めた関係者の合意形成を得ながらビジョンを固め、交通手段分担率などの目標値を設定した上で、逆算しインフラ整備や交通規制などの政策を展開します」

 日本でも、富山県が初めてSUMPの考え方を取り入れ、24年度から5年間の地域交通戦略を策定している。バックキャスティング型の計画で、収益性よりウェルビーイングの向上を目指す。富山県地域交通戦略会議のメンバーでもある宇都宮教授は言う。

「地域交通サービスは『公共サービス』という認識で、民間に丸投げではなく自治体や住民が自ら投資・参画する形に切り替えます。『公』が支えない鉄道は日本だけ。欧州から学べることは学び、日本も舵(かじ)を切る時です」

 時代の変化に応じた発想で、鉄道の未来を考えていく必要がある。いったんなくなった鉄路は、二度と戻らない。(編集部・野村昌二)

AERA 2024年2月26日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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