兵庫県の南部を走る北条鉄道。「生かす」という視点で、新しい価値を生み出している。車両は、旧国鉄型車両の「キハ40形」だ
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 地方のローカル線が存廃に揺れている。復活の方策はあるのか。未来の鉄道の在り方を、専門家に聞いた。AERA 2024年2月26日号より。

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 ローカル線を存続させるには、どうすればいいか。

 島根県立大学准教授で、ローカルジャーナリストとして『ローカル鉄道という希望』の著書もある田中輝美さんは、鉄道に「プラスアルファの価値」を加えることが大切だという。

 キーワードは「生かす」だ。

「鉄道を通勤通学の移動手段としてだけではなく、鉄道の持つ資産を有効活用し、新しい価値を生み出していくことです。それが結果として、鉄道を『残す』ことにつながります」

運命共同体の3者

 田中さんが注目する鉄道の一つに、兵庫県南部の田園地帯を走る第三セクターの北条鉄道がある。1987年の国鉄民営化から赤字が続き、廃線議論と隣りあわせだった。そこで北条鉄道は、利便性の向上はもちろん、演奏会やバー、お坊さんによる読経、絵手紙教室といった関わりたい人の想いを駅や列車で一緒に実現し、乗客を増やしていった。また、各地の駅を活用し、みんなが集まる「場」にすることも有効だと田中さんは言う。

「今後必要なのは、住民と地元自治体、そしてJRなど鉄道事業者の信頼関係です。特に自治体とJRは対立構造になってしまいがちですが、そうではなく、本来は住民と自治体、鉄道事業者の3者は運命共同体であるはず。対立するのではなく、3者が力を合わせることが大切。そうしなければ、分断されたままで何の解決策も生まれません」

 鉄道と街づくりに詳しい国学院大学の大門創(はじめ)准教授(交通計画)は、鉄道の存続には「鉄道とセットになった都市計画が大事」と話す。

「鉄道利用者が減った一因に、人口増加期の都市計画において、市街地拡大に際し鉄道ネットワークを加味してこなかったことがあります。1960年代の高度経済成長以降、モータリゼーションの時代になり、道路をつくれば好きな時に移動できる豊かな時代が来ると考えられてきました。そのため、行政は、駅から離れた場所を区画整理し住宅地をつくっていきます。そうなれば当然、鉄道は利用されなくなります」

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