『人類の終着点 戦争、AI、ヒューマニティの未来』

 世界に目を向けると何が起きているでしょうか。ポピュリストが台頭していますよね。自由民主主義の民主的な部分が、リベラルな部分を攻撃しています。ドナルド・トランプに、ハンガリーのビクトル・オルバーン、トルコのエルドアン……。彼らは全員、民主的な選挙で選ばれていますが、権力を用いて法を覆しています。法廷に詰めかけて、法の支配を無視し、法システムを弱体化させています。彼らは、反リベラルな民主主義を体現しているのです。

 インドも同様です。モディ首相は、選挙で選ばれています。民主的に指名されているわけです。ですが、彼はインドのムスリムの人権を奪っています。司法との関係においても、報道の面でも、法の外部で行動しています。このような傾向は、インドのシステムの他の面でも見られます。反リベラルな民主主義の一例です。

 ーーでは、「リベラリズムに対する人々の不満」の中心には何があるのでしょうか。

 フランシス・フクヤマ:それは、立場によって異なります。米国や欧州の若年層にとって気に食わないのは、「リベラリズムが多くの経済的な不平等を生み出すこと」です。この不平等は、日本を除き、米国や欧州で、ここ30年から40年の間に拡大しています。ですから、リベラリズムは、社会正義に不可欠である平等な結果に結びついていないと思われています。また、人種的なマイノリティや、女性あるいはゲイやレズビアンの権利を適切に扱っていないと思われています。

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