<俺の唯一の心残りはお前だったなあ>(妓夫太郎/11巻・第97話「何度生まれ変わっても<後編>」)
妓夫太郎はそんな後悔を心の中でつぶやいた。ならば妹を不幸せにしたのは妓夫太郎だったのか。そんなはずはない。答えは「妹」の言葉の中にある。
<絶対離れないから ずっと一緒にいるんだから!! 何回生まれ変わっても アタシはお兄ちゃんの妹になる絶対に!!>(梅/11巻・第97話「何度生まれ変わっても<後編>」)
おしゃべりな妓夫太郎の数々の言葉には、彼の願いが隠されていた。美しい顔、恵まれた体格、優しい妻、特別な才能、他者を救うこと、人に感謝されること。そして、妹の幸せな未来。
妓夫太郎は、地獄から妹だけはなんとか救おうとしたが、妹の幸せは「兄と一緒にいる」ことだった。それに気づいた時、妓夫太郎の心は少しだけでも救われただろうか。妓夫太郎は立派な兄だった。堕姫にとって、梅にとって、唯一無二の最高の兄だった。