原:実際には、「5年で箱根駅伝に出場する」という言い方をしたんですが、僕は3年契約の嘱託職員だったので、目標と契約期間にミスマッチがあったんです。しかも運の悪いことに、更新のときの3年目がいちばん成績が悪くて、チームも崩壊寸前だった。それで大学の執行部に対しては、陸上競技としての成果ではなく人間教育としての成果を話したんです。
林:たとえばどういうことですか。
原:陸上は身一つで走るシンプルな競技ですから、規則正しい生活が基本なんです。「起床は6時、門限は22時です。当初は門限破りもいましたが、いまは徐々に改善されています。ボランティアとして地域の清掃活動もやって、チームに一体感を持たせるようにしています。試験中は全員が食堂に集まり、勉強会をやっています……」。つまり、真っ当な学生を育てています、ということを熱く語ったような気がします。
林:執行部の方々の反応はどうでした?
原:キョトンとされてました(笑)。「いまやっていることが将来、陸上の成績に間違いなくつながります。土壌を改良して、いい循環に入りかけています。もうしばらくお待ちください」というようことを言ったところ、「頑張ってるんだね。じゃあ、もう1年様子を見ようか」という話になったんだと思いますね。
※週刊朝日 2016年3月18日号より抜粋