地方選挙で自民党に強い逆風が吹いている。自民王国である群馬、前橋市長選では野党系の候補が自民・公明が推薦する候補者を圧倒して勝利。京都市長選では自民、立憲などが相乗りした候補が勝利したが、共産系の候補が「近年にない」票を取り、接戦となった。さらにさかのぼれば、東京・江東区長選、八王子市長選は自民が推薦する候補が勝利したものの、当初は苦戦が報じられていた。ここでは、小池百合子都知事が前面に出たことが大きく影響したと見られている。これらの結果から見えることはなにか、今後の選挙への影響は。そして、衆議院の解散・総選挙の現実的な日程が見えてくるなか、気になる小池都知事の動きは。注目のポイントについて、法政大の白鳥浩教授(現代政治分析)に聞いた。
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――前橋市と京都市の市長選の結果について、どう見ましたか。
国政の問題が、地方選挙に直撃した結果だと思います。皆さんご存じの通り、政治とカネの問題です。
前橋市と言えば、自民党の中曽根康隆議員の選挙区でもあります。中曽根氏は二階派で、二階派は2億円以上もの裏金をつくったとして会計責任者が起訴されました。また、中曽根氏は中曽根康弘元首相を祖父にもつ世襲議員でもあります。
特に群馬は自民党を中心とした保守王国です。中曽根氏の他にも福田氏、小渕氏、笹川氏など世襲議員が多いです。福田氏は安倍派、小渕氏と笹川氏は茂木派で、裏金問題で揺れている。前橋市では自民党政治に対する閉塞(へいそく)感をどうにかしないといけないという雰囲気が醸成されていたと思います。
また、今回野党系が支援し、当選した小川晶氏は、市長になれば「女性初」ということも良かったと思います。これまでの自民党政治とは違う、何かを変えてくれるというイメージにつながったと思います。
京都市長選でも既存の政治を打ち破ってくれる政治家を求める雰囲気はあったと思います。当初、その受け皿になったのは、日本維新の会や教育無償化を実現する会(代表・前原誠司)、国民民主党京都府連らが推薦する村山祥栄氏でした。
村山氏が勝てる選挙でしたが、選挙直前になって村山氏が“空パーティー”をやっていた問題が浮上しました。違法な企業献金にあたる恐れがあると指摘されました。自民党の政治とカネを追及する側の人が、政治とカネの問題を抱えてしまったわけです。その結果、村山氏は推薦を失い、惨敗しました。