女性たちは外見を磨くことにも時間をかけた。長くたっぷりとした黒髪、白い肌、ふっくらとした丸顔に丸いおでこが理想とされた(東京国立博物館蔵/ColBase)
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 2024年の大河ドラマ光る君へ」も2月11日の放送で第6回。清少納言(ファーストサマーウイカ)も登場し、いよいよ、まひろ(吉高由里子)こと紫式部の才女ぶりが描かれていく。

 平安貴族のお姫様というと、美しい着物をまとって和歌を詠み、毎日邸宅で女房相手に遊んだり読書をしたり、のんびりと生活しているというイメージが強い。しかし彼女たちの人生は、現代人が想像するよりかなり大変なものだった。今回は、当時の女性たちを取り巻く環境について、『出来事と文化が同時にわかる 平安時代』(監修 伊藤賀一/編集 かみゆ歴史編集部)からリポートしたい。

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 平安貴族の女性は、生まれてから死ぬまでほとんど家の外にすら出られなかった。彼女たちの最大の役割は、結婚して子どもをつくることだったためだ。結婚相手も誰でもいい、というわけではない。より高貴で才能がある男性との結婚は、妻となる女性だけでなく、その親族にも栄華をもたらした。そのため平安貴族は、魅力的な男性と釣り合うだけの教養を身につけさせようと、熱心に女子を教育した。

 まずは、和歌だ。恋愛の始まりは和歌のやりとりからだったため、和歌のセンスは婚活の必須条件だった。そのためにはさまざまな知識や教養が必要。『古今和歌集』に収められた1111首、すべての和歌を暗記した強者もいたという。

 この時代の交流は手紙が基本。和歌や手紙を渡す際、文字が美しいと相手の印象も大きく変わるということで、品格や教養の深さ、センスの良さが伝わる美しい文字を書くことは、非常に重視された。

 行事で楽器を演奏する機会が多かったので、演奏のうまさも婚活で見られるポイントだった。特に人気だったのは琴だ。夜、女性の邸宅の前を通りかかった男性が、邸内から漏れてくる音色を聴いて恋に落ちるシーンが、物語にも描かれている。

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天皇のもとへ向かおうとする女性を通せんぼ