甲本ヒロト(こうもと・ひろと)/1963年生まれ。87年、THE BLUE HEARTSのボーカルとしてメジャーデビュー。その後THE HIGH-LOWSを経て、ザ・クロマニヨンズで活動(撮影/蜷川実花)
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 多くのミュージシャンに影響を与え続けてきたレジェンド、甲本ヒロト。尽きない衝動の秘密を語った。AERA 2024年2月5日号より。

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――中学1年生の時にラジオでマンフレッド・マンの楽曲を聴いたことをきっかけにロックと出合った甲本ヒロト。今もなお毎日のようにレコードを聴き、感動し続けているという。

甲本ヒロト(以下、甲本):日々、ロックンロールのレコードを中心に聴いていますが、聴く度に「うわ、かっこいい」「やられた」と思います。「もっとレコードで感動したい!」と思って、どんどんオーディオセットにこだわるようになりました。僕が特に好きな音楽は1950~60年代のロックンロール。その頃のオーディオを揃えて、「ジョン・レノンやミック・ジャガーはどういう音を聴いて衝撃を受け、ロックンロールを始めたんだろう?」と想像を巡らせます。

 ジョン・レノンやミック・ジャガーが50年代のレコードを聴いて、その波紋がビートルズやローリング・ストーンズになった。だから「僕にもその波紋をくれよ」「その波紋になりたい」と思う。日々レコードから得る波紋が曲になるし、ライブになる。すべては波紋です。

 僕はレコードを聴いてたまらなく感動して気がついたら泣いていることがよくあります。素晴らしいロックンロールを聴くと当たり前にそうなってしまう。でもある時、80年代にリリースされたCDでオーティス・レディングのアルバムを聴いて一粒の涙も出なかったことがありました。「俺、とうとうロックに飽きちゃったのかな。大人になるってこういうことなんだろうか」と寂しい気持ちになりました。

「笑う」と「泣く」は同列

 僕はロックンロールの感動の波紋でバンドをやっているので、バンドをやる動機もなくなり、無気力になりました。「このまま既に決まっているバンドのスケジュールをこなしていくのか。つまんない人生だな」と思った。だけどその後、同じオーティス・レディングの音源をレコードで聴いたらドバーッて涙があふれてきたんです。音の専門家ではないのでレコードとCDの違いは細かくわかりませんが、確実に何かが違うんです。そこから僕は「レコードを作る」と意識するようになりました。だから、クロマニヨンズの新作を作る際はずっとアナログ盤も作っています。そして、「レコードに負けないようなCDを作ろう」と思っています。

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