AERA 2024年2月5日号より

 これまで医師は、医療の「特殊性」から時間外労働の上限適用は5年間猶予されていた。それが今年4月から「医師の働き方改革」が始まり、原則年960時間(月80時間相当)の上限が設けられる。だが荒木弁護士は、「実質的な労働時間を減らす改革にならない」と警鐘を鳴らす。

「医療の需要は増していますが、医師の数を増やすことは困難です。そうなると、病院は働き方改革の名の下、年960時間をクリアするため自己研鑽や宿日直許可を増やすことで乗り越えていこうとし、すでに多くの病院では宿日直許可を増やしています。その結果、外科や脳神経外科、救急科、産婦人科といった長時間労働になりがちな診療科に進む医師が減っていきます。医師の長時間労働をいかに減らしていくかは、喫緊の課題です」

 誰もが安心して働ける職場をどうやって実現すればいいのか。

一番大事なのは、労働者が声を上げられること

「過労死弁護団全国連絡会議」幹事長の玉木一成弁護士は、「何より経営層が変わる必要がある」と強調する。

「長時間労働を減らす根本的な対策は、仕事量を減らすか、人を増やすかしかありません。しかし人手不足の中、できるのは仕事量を減らすことです。仕事量を減らすのは、経営層の役割。無駄な仕事を効率的に減らし、労働時間が短くても利益を確保できる仕組みをつくることが求められます」

 労働問題などに取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」代表の今野晴貴さんは、「一番大事なのは、労働者が声を上げられることだ」と言う。

「いま国は、経営者を啓発し、労働者に医学的な知識を普及させようとしています。これは決して悪いことではありませんが、何かあった際、健康管理ができていなかったとして労働者の責任が強調される側面もあります」

 そうならないためにも、労働者自身が声を上げ、過重労働や過労死した際の責任を会社に追及できるようにならなければ状況は変わらない、と今野さんは説く。

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