入社後のミスマッチを防ぐため、インターンシップも強化。昨年11月から12月に開催した営業職のインターンは、予定枠に対し8倍以上が応募するなど、前年を上回る勢いだという。
学生優位の「売り手市場」が叫ばれるようになり、人事担当者は口々に採用難だとこぼす。マイナビの調査でも、毎年3月時点での平均エントリー社数は年々減少。20年卒は17.3社だったのが、24年卒になると9.1社まで落ち込んでいる。
企業側も手をこまねいているわけにはいかない。厳しい時代とて「本当にほしい人材」にターゲットを絞る。
しかし、だ。
就活の早期化や口コミサイトの影響で、学生側の視線はシビアになっている。少子化も相まって採用広報に力を入れなければ、このご時世、学生にそっぽを向かれるのは想像に難くない。
貨物輸送事業を軸にする近鉄ロジスティクス・システムズの採用担当者も「母集団形成に課題がある」と頭を抱えている。
ネックは、転勤だ。
「男女を問わず、地元志向で外に出たがらない学生が増えたと感じています」
だが、物流業界ゆえ、拠点は全国にある。希望する勤務エリアに沿うよう意識しているが、転勤を懸念する学生からは、縁遠い企業でもあった。そこで、25年卒からは転勤がない一般職採用も導入する。ほしい人材像を変えた。
「ボリュームゾーンは総合職ですが、少しずつ対応できればと思っています。新入社員を見ていると、成長のために厳しく指導してほしいという人もいれば、淡々と仕事をしたいタイプの人と二極化が強まっていますね」
昨秋、「8時間労働に耐えられない」と涙ながらに訴える新社会人の動画が賛否を呼んだが、SNSには共感する20代の声も目立っていた。
こうした価値観の変化は、数字にも表れている。
新入社員を対象にリクルートマネジメントソリューションズが行った調査では、職場にアットホームさを求めると答えた人は37.3%と過去最低。10年前と比べると、6.9ポイントマイナスだった。さらに、「活気がある」はマイナス19.2ポイントと大きく下がっている。一方で、「お互いに個性を尊重する」は21.8ポイントアップの50.7%と過去最高だ。