プライベートスペースは、その持ち主にお任せを。片づけの強要もNGだ。リビングなどのパブリックスペースは、自分のモノに関しては自分のペースで。家族のモノが出しっぱなしになっていて困ると思ったら、「私はこうしたいんだけど、あなたはどう?」と問いかけよう。出しっぱなしには、持ち主がそうしたい理由がある。
「ある受講者さんは、お子さんがリビングに上着を脱ぎ散らかし、ランドセルを放り出すのが悩み。でもお子さんにとっては『玄関で上着を脱ぐと寒い。それに上着を脱ぐにはランドセルを下ろさなければならないから面倒。一度に全部やりたい』。では、どこなら片づけられるか? お子さんに聞くと『リビングにコート掛けの場所があったら』との返事でした。そこで、リビングの一角に上着をかけ、ランドセルを置ける場所を作ったところ、受講者さんの悩みが解消したのです」
家族や同居人がいると、全員がwin-winとなるケースばかりではない。しかし、みなが納得できる着地点は見つけられる。
【使いやすい配置に】
使いやすさは、片づけやすさだ。背が届きにくい棚によく使う調理器具を配置していると、しまうのが面倒で出しっぱなしに。子どもがリビングで宿題をしたり本を読んだりする習慣があるのに、それらの置き場所が子ども部屋では「何回注意してもリビングに出しっぱなし!」となりかねない。
片づけは命を守ること
「自分や家族の家事や生活の動線をチェックし、日常的に使うものは動線上に置くと片づけがスムーズにいきます。収納場所は『手数を増やさず、取り出しやすく、戻しやすい』を優先して決めるといいですよ」
新年に能登半島地震が発生。西崎さんは石川県金沢市に住んでいた時期もあり、馴染み深い、大切な場所だという。友人知人や受講者から安否の連絡が届く中、「防災グッズや備蓄品がすぐに取り出せた」「重いモノを下に移していたので、落ちて下敷きにならなかった」などのメッセージが届いた。「片づけは防災、命を守ることと改めて感じました」と西崎さん。
片づけには、もはやメリットしかない。
(ライター・羽根田真智)
※AERA 2024年2月5日号 より抜粋