交通手段が閉ざされれば、当然児童・生徒の登下校にも深刻な影響を及ぼすわけで、両者は不可分のものなのだが、問題は、学校の統廃合を決定する機関が教育委員会なのに対し、交通機関の存続を決定するのは民間企業、あるいは自治体の都市政策に関する部署で、両者が必ずしも連携が取れているわけではないという点にある。
交通機関の縮小を充分に考慮せず学校の統廃合が進められたり、あるいは地域に児童や生徒がまだ残っていたとしても、バス路線が維持できなくなっているところがある。状況は数年単位で目まぐるしく変化している。
その一方で住宅や住宅地というものは、高額商品であることもあって、一度完成したら数十年単位で利用されるものなので、地域社会の急速な変化に、不動産市場が追い付いていない。住宅地が地域社会から取り残され「限界化」してしまう理由はこの点にもある。
学校の有無は、現在、多くの地方都市において、その土地の資産性や流動性を左右する最も重要なファクターになっている。そもそも地方の小都市の道路事情は、都市部のように徒歩での移動を前提にしていないことが多く、子供が徒歩で登下校するには危険な道路が少なくない。
横断歩道も少なく、歩道もない。自治体によっては登下校のためのスクールバスを運行しているところもあるが、それはあくまで登下校のためのもので、子供が自力で移動するための公共交通網はすでに失われている。